表面テクスチャリング(テクスチャ)とは

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表面テクスチャリング(テクスチャ)とは

表面テクスチャリングとは

表面に微細な凹凸を付加する加工技術で,主に潤滑特性を制御することを目的に加工されます。

下図のようなことです。

そして,表面テクスチャリングを行うことにより期待される効果は以下の四つあります。

 なじみの促進

初期なじみ(ならし運転)期間の潤滑は,機械加工直後の摩擦面のため,接触面凸部の凝着が多く,通常運転時より遥かに多くの摩耗を伴いながら摩擦面がしだいに塑性変形して平滑化される。

表面テクスチャはなじみを促進し,初期なじみの期間を短くする効果が期待される。

油だまり効果

しゅう動面間の潤滑液はしゅう動に伴い一定量を保つことができない。潤滑液が足りず境界潤滑状態になるとしゅう動面が接触し,焼き付きが起きる。表面テクスチャを有するしゅう動面ではディンプル部に潤滑液を保持し,しゅう動による表面張力によって一定量を保持することで部品寿命を延ばすことが期待される。

  摩耗粒子,異物トラップ

しゅう動面の接触により発生した摩耗粉や,予期せぬ異物が潤滑液に存在すると,部品寿命が大きく下がる.表面テクスチャを有するしゅう動面ではディンプル部に摩耗粉や異物を捕捉することで部品寿命を延ばすことが期待される。

流体動圧効果による負荷容量の増加

ディンプル部の流路幅の変化により流体膜に正圧が発生し,しゅう動面を浮上させる力が発生する。しゅう動面が浮上することで,流体膜が確保され摩擦を低減する効果が期待される。

どれも、潤滑特性向上に繋がる。ものばかりですね。

  表面テクスチャの加工法

テクスチャの加工法は以下の方法があります。

A          機械加工

切削加工や研削加工によって表面を加工することでテクスチャ表面を付与する.

昔でいう、きさげ作業ですね

B          エッチング加工

エッチング加工は,科学薬品などの腐食作用を利用した表面加工法である.これには浸漬法,噴射法,バドル法などがある.噴射法は,ノズルから腐食液を工作物に噴射するもので,バドル法はバドル(羽根車)により液を均一に工作物にかけるものである.

専門用語がいっぱいですが、簡単に言うと溶かして凹凸を作るという事です。

C          レーザー加工

レーザー棒より出たレーザービームを集束し工作物の表面に焦点を結ばせると,高いエネルギー密度のために照射点は瞬時に沸点以上の高温となり,蒸発するかまたは溶融物が爆発的に飛散するが,この現象を利用すれば,穴あけ,トリミングなどの除去加工を行うことができる。

D          タイリング加工

特殊形状エンドミルの断続切削により,マイクロディンプルから構成されるテクスチャを付与することができる。

高速加工が可能である.(1分間に3000~12000個のディンプル)

任意形状に適用可能で自由曲面や,円筒の内外周といったレーザーでは加工できない箇所を加工できる。

この加工法は2018年に兼房株式会社が発表した加工法です。
素晴らしい技術です。

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潤滑状態とテクスチャの役割

潤滑状態とテクスチャの役割は違ってきます。

境界潤滑とテクスチャ

境界潤滑状態ではテクスチャの大きさは数μm、期待する効果としては摩耗粉の捕集あります。
境界潤滑は材料同士がほぼ接触しているので、摩耗粉があると摩擦力が上がってしまうため、摩耗粉の捕集をテクスチャに期待します。

混合潤滑とテクスチャ

混合潤滑状態ではテクスチャの大きさは数十μm、期待する効果としては摩耗粉の捕集、材料の変形量の増加あります。
摩耗粉の捕集境界潤滑と同じ理由です。

材料の変形量の増加は混合潤滑状態の中に弾性流体潤滑(EHL)があります。
この状態は材料が変形することで油膜を確保します。
つまり、変形量が増加すると摩擦力の低減が期待できます。

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流体潤滑とテクスチャ

流体潤滑状態ではテクスチャの大きさは数百μm、期待する効果は流体動圧効果による負荷容量の増加

負荷容量が増加することで油膜が増加し摩擦力が下がるためこの効果を期待します。

テクスチャ形状と圧力分布の変化

実際に、シミュレーションで、テクスチャ形状と圧力分布の変化を解析した。

下図がその結果です。

テクスチャ形状によっては圧力が減少していることが分かりますね。

つまり、むやみにテクスチャを付ければいいというわけではないことが分かりますね。

まとめ

表面テクスチャリング(テクスチャ)はまだまだ発展していく分野だと思います。

タイリング加工が発表されたことにより、様々なテクスチャ形状を付けることが出来るようになりました。

その時々で最適なテクスチャ形状が表現できるような世の中になることを願っています。

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