弾性流体潤滑
前に、レイノルズ方程式について書きました。
レイノルズ方程式を広く捉えると潤滑の式なんです。
潤滑には、流体潤滑、境界潤滑、混合潤滑等があります。
今回はその中の弾性流体潤滑について書いていきたいと思います。
潤滑とは
まず、潤滑について少し説明したいと思います。
工業的な説明ですが、潤滑は摩擦面に油などを与えることによって、摩擦抵抗や、摩耗等を減らすことをいいます。
摩擦という言葉は日常生活でもよく聞きにし、摩擦は小さいほうがいいと言われることが多いのではないでしょうか?
摩擦を減らすファクターの一つとして、潤滑があります。
次に、潤滑状態を表す指標として、ストライベック曲線があります。
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図 ストライベック曲線
ストライベック曲線の図を見ると流体潤滑状態が一番、摩擦係数が小さいですね。
つまり摩擦を小さくしたいなら、流体潤滑状態寄りにしたいわけです。
弾性流体潤滑
弾性流体潤滑は簡単に説明すると、2つのすべり面同士の隙間が薄く、本来なら、十分な油膜ができない(境界潤滑寄り)が、材料が弾性変形することである程度の厚い油膜(流体潤滑寄り)ができる状態のことをいいます。(大体 膜厚は数十~数百 [nm])
弾性流体潤滑は流体潤滑状態寄りになり摩擦を小さくなるということです。
数値計算による弾性流体潤滑(EHL)
弾性流体潤滑(EHL)を表すための式があります。
まずは高圧粘度特性です。
EHLは金属が変形することで油膜を確保します。
金属が変形するつまり、変形するほど強い力(圧力)が発生しているということです。(発生する圧力はGPaオーダ程度)
潤滑油は高圧状況下では粘度が高く(固体に近づく)なります。
身近な例だと、片栗粉を水に溶かして、その水の上を人が走る実験をテレビでやっていますが、あんな感じで、油が固くなります。
潤滑油の高圧粘度特性でよく使われる式として、バラスの式があります。
η = η0 * exp(αp)
このような式です。ここで、ηは圧力pの下での粘度, η0は大気圧下での粘度、αは粘度の圧力指数です。
そして、EHLで起こる事象を考慮して作られた式として、Dowson-Higginsonの式があります。
hmin /R = 2.65G 0.54 * U0.7 * W-0.13
このような式です。
ここで、
材料パラメータ G = αE’
速度パラメータ U = η0*u/(E’R)
荷重パラメータ W = w/(E’R)
です。
この3つのパラメータは無次元式でEHLの油膜状態を表す簡潔な式です。
Dowson-Higginsonの式を使って膜厚を計算するとこんな感じになりました。
境界潤滑が分子レベルで潤滑(膜厚10-10 [m]オーダー)するに対し、EHLでは図のような膜厚になります。(与える条件によって膜厚が変わりますが)
膜厚が厚くなることで摩擦も低減されます。
まとめ
Dowson-Higginsonの式を使ってEHL計算をしました。
しかし、この式はレイノルズ方程式と同じで式の簡単にしたものです。
今はもっと違う方法で求めています。
しかしEHLを知るにはいい式だと思います。